「白蛇教異端審問」桐野夏生

なんだか疲れているときは小説を読む気分にはなれず、きまって手を伸ばしてしまうのが桐野夏生さんのエッセイ「白蛇教異端審問」。読みすぎて本がもうボロボロになってしまいました。
エッセイやショートコラム、直木賞受賞した日々の日記に書評・映画評などリアルな姿がそこにあって、小説からは知ることが出来ない桐野さんという存在を感じられることがとても嬉しいのです。“イカのくさみが消えていないと娘に言われ、むかついて書斎へいく桐野さん”とか最高じゃないですか。
それから匿名や評論家の批判に対して真っ向から戦いを挑んだ連載も読むことが出来ます。“スルーするのが美学”と捉えられている(ような気がする)批判論争ですが、命を削って書いている小説に対しての軽口に対して正々堂々と立ち向かっていく桐野さんがかっこよくて人間味溢れていて本当に大好きです。信念を垣間見ることが出来て、桐野夏生信者としては光栄ですとしかいえない一冊。
 

「人は生まれ落ちた瞬間から、「やむなき旅人」となる。旅に出たくなくても、ひとつところに留まりたくても、生まれた以上は個人という旅を続けねばならない。長い人生、何が起きるかはわからない。人は偶発的な災難や事故に危機感を持ち、目配りしながら生きる者たちであったはずだ。いずれ来る死への茫漠たる不安を抱え、それでもなお仕事を片付け、家族を愛し、恙ない一日を送ることのできた感謝を持ちながら。」(やむなき旅人 より)
 

久々に読み返して、ページをめくる手が止まってしまったエッセイの一部分。こんなにも心に染みる文章があるだろうかとあらゆる人に伝えたい。

ちなみに桐野さん著書ベスト3は「柔らかな頬」「グロテスク」「残虐記」。どれも読むのに体力がいる力強い作品たち。そろそろ再読したいな。
“自分の身辺を晒したり、装飾するエッセイが苦手”とあとがきにありましたが、またいつか出してくれたらいいなと心から望んでいます。

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です